本当に使えるブランドガイドラインとは?作成・運用のポイントと事例
ブランドガイドラインとは?ブランドガイドラインの意味と定義
ブランドガイドラインとは、企業のCI(コーポレートアイデンティティ)を確立した上で、企業とステークホルダーのあらゆる接触対応シーンを想定してつくられるガイドラインです。ブランドガイドラインは、視覚的要素/言葉要素/人格的距離感などを含めて設計されます。
一般的には、ブランドガイドラインは、ブランドのロゴマークやロゴタイプのカラーやサイズ、アイソレーションエリアなど、ブランドのビジュアルの使い方や注意点を細かく指定したガイドラインだと思われています。もちろんそれも間違いではありませんが、本来のブランドガイドラインは接触対応シーンに合わせて最適なブランドの見え方を設計するもので、ロゴの利用ルールはその一部分だと考えるのが適切でしょう。
ブランドガイドラインは何のためにあるのか
ブランドガイドラインは、CI(コーポレートアイデンティティ)の中でも主にVI(ビジュアルアイデンティティ)と関連しています。CIもVIもどちらにも「アイデンティティ」とある通り、企業の軸であり、拠り所です。
発信したブランドを正しく受け手に認識してもらうには、一貫性や統一感が必要です。ブランドガイドラインを作ることでブランドのビジュアル面の一貫性が担保され、ブランドイメージの蓄積につなげることができます。
ブランドガイドラインの具体例
ブランドガイドラインがどのようなものかイメージしやすいよう、具体例としてTwitterのブランドガイドラインをご紹介します。
Twitter-ブランドガイドライン(英語)
https://about.twitter.com/content/dam/about-twitter/company/brand-resources/en_us/Twitter_Brand_Guidelines_V2_0.pdf
PDFで提供されており、ロゴの色や回転・拡大縮小の禁止などの基本的な注意事項から始まり、必要な余白サイズやテキストと並べた場合の配置、NG例などが図解入りで指定されています。
これは、ロゴ使用についての最低限のルールを外部公開用にまとめているもので、正式なブランドガイドラインとは異なるかもしれませんが、ざっくりのイメージとしては外れていないでしょう。
昔ながらの分厚いブランドガイドラインはもう機能しない?
ブランディングファームにブランドの構築を依頼すると、最終的な納品物として数百ページにおよぶブランドガイドラインが送られてくることがよくあります。15年くらい前まではきちんと装丁された紙の冊子で納品されていましたが、現在はさすがにPDFやPowerPointのファイルで納品されるのが主流になっています。
これは1970年代、50年前の手法です。ビジネスにスピード感が要求される現代では、バナー1つLP1枚を作るのに分厚いガイドラインをめくりながら作業するのは現実的ではありません。ブランドガイドラインがあっても参照されない、守られないという状況を招きます。
では、ブランドガイドラインを厳守させるためのチェック体制を作ればよいのかというと、それも最適解ではありません。チェックを通すための手続きの煩雑さや融通の利かなさが現場との軋轢を生み、うまく機能しないケースが多々あります。
これらの古い常識から脱却し、適切に機能するブランドガイドラインを作るためにはどうするべきなのでしょうか。
具体例で紹介したようなロゴの色やサイズなどの項目を定めるのももちろん重要ですが、それだけでは足りません。後半では、これからのブランドガイドラインの作り方と運用について解説します。
「これからのブランドガイドライン」をどう作り上げていくべきか
ブランドガイドラインのあり方に正解やフレームワークはありません。その会社の状況に合わせて作り、随時アップデートしていかなければならないからです。
以下では、ブランドガイドラインを作り上げていくためのキーポイントを3つ紹介します。
アップデートを前提として最適な設計を考える
会社やブランドの状況は日々変化します。それに合わせてブランドガイドラインも柔軟に変化していかなくてはなりません。恒常的なルールを決めるのではなく、アップデートすることを前提に作っておくと後々便利です。
近年はデザインシステムのような流動的なシステム設計の手法を取り入れるケースも増えています。全社的なルールと現場で判断できる部分を分けることで、自由度やスピードとガイドライン遵守を両立させることができます。
ガイドラインを運用していくための体制も含めて考える
ブランドガイドラインを作ること自体は目的ではなく、それを運用していくことによりブランドの一貫性を保つことが目的です。そのため、ガイドライン構築にあたっては、運用体制も含めて考える必要があります。
どのようにブランドガイドラインを社内に浸透させるか。どのようなチェック体制が現実的か。煩わしくないオペレーションはどのようなものか。このような視点でベストな運用体制を構築していきます。
たとえば、ブランドガイドラインに対するQA(クオリティ・アシュアランス:品質保証)担当部署を作り問い合わせを集約する、コピーライティングやUXライティングの部署にQAを任せて制作と一体化させて質を担保するなどのケースが考えられます。体制についてもガイドライン自体と同様、正解やフレームワークはありません。
ルールだけでなく、背景への理解も深める
ブランドガイドラインを社内に浸透させ適切に使用してもらうには、上流の概念から理解を深める必要があります。ただルールだけを配布し守らせるのではなく、ミッションやビジョンとのつながりから説明し納得してもらうのです。
ブランドロゴの色や形を決めて書面にしただけでは、それは退屈なルールブックでしかありません。会社のミッションやビジョンからどのようなCIが設定されており、そのCIがどのようにロゴの色や形として落とし込まれているのか。どういう理由で表現に制限がかけられているのか。背景まで含めて理解することで初めて、会社やブランドを象徴する軸として機能します。
そのためには、社内の人間に構築やリニューアルのプロセスに関わってもらい、ブランドガイドラインの成り立ちを体験してもらうという手法もあります。参考として、DONGURIがCI刷新支援を行ったオカヤス株式会社様での事例を紹介します。
事例:オカヤス株式会社の場合
CIを刷新するにあたり、社内からのヒアリングを徹底して行いました。聞き取り項目は以下の通りです。経営層から現場のリーダーまで、幅広い層から話を聞いています。
・創業から現在までの変遷
・企業文化
・今後の経営計画/事業戦略
・各部門の業務プロセスと課題点
上記のインタビューを踏まえた上で新しいビジョンのプロトタイプを作り、さらにディスカッションを重ねてブラッシュアップ。最終的に決定したビジョンを元に、VIやタグライン、その他コーポレートタイプ含む各種ツールを開発するという流れです。業務プロセスの中で活用できるようなブランドガイドラインもツールと同時に作成されています。
経営層の理念と現場からの声から生まれたCI、VIは会社やブランドの現状を反映したものになります。構築の過程に参加してもらったことで、社内のメンバーにとって納得感のあるものになりました。
この事例をより詳細に知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【WORKS|実績】Japan品質、世界へ。 国外市場を見据えたコーポレートブランディング
役割を理解し、適切に機能するガイドラインを
ブランドガイドラインは「あらゆるアウトプット場面においてCIを体現するにはロゴマークやロゴタイプをどのように取り扱うのが適切か」を示した指針です。なぜこういう取り扱いになっているのかが理解されると、社内への浸透も促進されるでしょう。
分厚いブランドガイドラインを作成しても、それがうまく機能していないのであれば役割を果たしているとはいえません。状況に合わせてアップデートしていくことも見据えて、運用のための体制まで含めて構築する必要があります。