CAPABILITY

できること

インナーブランディング

INNER BRANDING

インナーブランディングとは?企業が期待できる効果と成功事例

インナーブランディングとは何か?意味・定義

インナーブランディングとは、ブランディング施策において、特に対象を組織に所属するメンバーに絞って行う活動全般のこと。成果目標がエンゲージメント向上に設定されることが多いという特徴があります。

一般的なブランディングでは、自社の商品やサービス、あるいは自社自体に対してい抱いてほしい独自のイメージを、社外のステークホルダーへ発信・共有します。

一方、インナーブランディングでは社員に向けて自社のイメージを発信、共有していきます。

自社に所属するメンバーに対し、さまざまな施策を通じて「自社がどんな企業・ブランドなのか、どうありたいのか、大切にしているものは何か」という認識・理解を深めてもらえるよう取り組みます。そうすることで、経営陣やブランド責任者といった一部だけではなく、全ての社員が自社のブランドを理解でき、ブランドのアイデンティティに沿った行動ができるようになるのです。

インナーブランディングによって起こる変化。エンゲージメントとの関連性

インナーブランディングの成果指標として定められることの多い指標は「社員のエンゲージメント」で、その高低を左右する重要な要因のひとつに「心理的契約」があります。インナーブランディングを考えるにあたっては、社員のエンゲージメントに大きく影響を与える「心理的契約」を理解しておくことが必要です。

心理的契約とは、暗黙のうちに結ばれた組織と社員の間の契約のこと。たとえば過去の日本企業で慣習的に取り入れられていた「終身雇用制度」においては、企業は「社員は会社を辞めない」という期待、社員は「会社は私をずっと雇ってくれる」という期待を双方向で持っているため、心理的契約が結ばれている状態です。この契約が果たされていると、社員のエンゲージメントは高い状態になります。

エンゲージメントを高める上では、社員に何を期待するのか、逆に社員からのどのような期待に応えられるかをすり合わせておくことが重要です。

インナーブランディングは、従業員から持たれる期待と実際に満たせる期待の誤差を減らすのに役に立ちます。インナーブランディングによって、企業の目指す方向や存在意義、社員を含めた社会の人々に対してどのような会社であるべきかといった方向性を社員がしっかり理解できるようになります。その結果、適切な心理的契約を結べるようになり、エンゲージメントが向上していくのです。

心理的契約とエンゲージメントの関係

心理的契約については、以下の記事でより詳細に解説しています。もう少し深く知りたいという方は、ぜひご覧ください。
エンゲージメントとは?意味や重要性、エンゲージメントを高める方法

インナーブランディングは、その過程こそが最も大切

ここで、インナーブランディングに対する、よくある誤解についてお話ししたいと思います。

一般に、インナーブランディングは企業のミッションやビジョンを社員に浸透させていく「施策」と捉えられがちです。そこで、人事や広報が社内向けのコンテンツを発信したり、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を社内に貼り出すといった浸透施策が行われます。

しかし、効果的なインナーブランディングを実施していく上で最も重要なのは、「ミッションやビジョン、もしくはパーパス(存在意義)を作っていく過程や、それらに意味づけしていくためのメンバー間の対話」です。

「自分たちはどんな企業であり、どんな存在でありたいのか」をメンバー同士で考える機会を作り、かつそれを形骸化させず、更新すること。ミッション・ビジョンなどの言葉自体ではなく、それが作られる過程で個々のメンバーが自分なりに意味を捉える・捉え直す活動に大きな意味があるのです。

インナーブランディングに関する誤った認識

企業の業績をあげたいので、個々の社員の活動量を増やしたい
⇨そのために社員のエンゲージメントやモチベーションを高めたい
⇨そのためにインナーブランディングに力を入れたい
⇨「施策」として人事や広報が発信を強化する

上記は誤った認識で、作用の順序は次のとおりです。

インナーブランディングの効果

組織内の対話を促し、社員に自らの業務の意味をしっかり理解してもらいたい
⇨社員が自らの業務の意義や、企業としての「ありたい姿」を再認識することができ、その結果として社員のエンゲージメントやモチベーションが高まる
⇨社員ひとりひとりが、目標を明確に理解し、より成果に大きなインパクトを持つ業務に集中することができるようになる
⇨その結果として、企業・組織の業績が上がる

表面的なインナーブランディング施策に躍起になるではなく、本質的に社員のエンゲージメントを高めるための過程としてインナーブランディングを捉えていくのが重要です。

インナーブランディングの成功事例:資生堂

インナーブランディングにおいては、ミッションやパーパスを社員に内在化させていく過程こそが重要だとお伝えしました。その過程の設計は組織に合わせてオーダーメイドするべきものであり、決まった手法や手順は存在しません。しかしここでは、インナーブランディングの事例から、「どのような過程で組織のミッションなどを浸透させるのか」のヒントをお伝えできればと思います。

ご紹介するのは、世界中に4.6万人の社員がいる資生堂グループにおける事例です。資生堂では、すでに決まった行動指針をどのように社員に浸透させていけばいいのかとい点に課題を持っていました。その解決策として、インナーブランディングに取り組んだのです。

なお、この事例ではすでに確定した行動指針がある中で進めていますが、そういった決まったものがない場合でも、ワークショップなどを使って社員をまき込む施策など、やるべきことの大枠は変わりません。参考になる点があれば幸いです。

取り組みの概要と課題

TRUST8

資生堂では、2015〜2020年度の中長期戦略「VISION 2020」実現に向け、社員一人ひとりに行動指針「TRUST8」を自分ごととして理解してもらい、現場で主体的に実践してもらう必要がありました。しかし、社員数は4.6万人という大規模で、それぞれ国籍や業務内容も異なります。

こういった条件下で「TRUST8」を浸透させ、社員が同じ方向を向けるようにしなければならない難しさを抱えていたのです。

ボトムアップ型のアプローチの導入

「TRUST8」の意味を考えながら自分ごと化してもらうため、ボトムアップ型のアプローチであるワークショップを採用。トップダウンで決められた行動指針を、対話の中で自分なりに解釈する機会を作ったのです。

このワークショップのプログラムには、以下の3つのポイントがありました。

トップダウンで決められたものを自分たちの手で再編集する

ワークショップの内容は、8つの行動指針からなる「TRUST8」の中から自分たちのチームにとって優先順位が低い行動指針を1つを削り、チームに合った新しい指針を1つ加えるというもの。どれかを削るためには、既存の行動指針を「自分やチームにとってどれほど重要か」という視点で理解しなければなりません。さらに1つ加えるためには、自分たちの在り方を振り返る作業も必要です。

このワークショップを通して、楽しみながら自分たちの目線で「TRUST8」を解釈、再編集できるよう試みました。

手を動かしてアウトプットを作る

「TRUST8」あるいは自分たちで新たな指針を加えた「TRUST8’」 を職場で実現した姿を、ポスター写真として撮影するワークをプログラムに組み込んでいます。ワークショップの基本ですが、対象を「知る」だけでなく何かしらのアウトプットを「作る」活動が重要であり、その過程で身体感覚を含めて対象を理解できるのです。

体を動かしながら、ポスターというアウトプットを作成する中で、「TRUST8」はより親しみを持てる行動指針として社員に浸透していきました。

TRUST8

再現性を出すためのマニュアル作成とファシリテーターの育成

多くの社員がワークショップに参加できるようにするためには、プロのファシリテーターでなくともプログラムを再現でき、各地域拠点のメンバー自らがワークショップを開催できるようにする必要がありました。

そのため、ワークショップのプログラムを作成すると同時に、使いやすいツールキット、詳細なファシリテーションマニュアル、明快なスライド資料などを作成。また、ファシリテーター育成研修や映像教材などのフォローアップも準備しました。その結果、ワークショップの専門家ではない社員でもファシリテートが可能になり、各国で同じ内容の浸透施策を実施できました。

結果

この取組みの結果、行動指針への理解が深まり、世界中の現場に納得感を持って受け入れられました。

トップダウンで作成したミッション、ビジョン、行動指針などが現場になかなか浸透しないケースは多く見られます。しかし、特に資生堂のような大企業では、ミッションの策定段階に関与してもらい、その過程で浸透させていくというのは難しいでしょう。この事例のようなボトムアップのアプローチを取り入れることで、たとえ策定の過程には関われなくても意味づけの過程を通して理念を伝え、インナーブランディングにつなげていけるのです。

この事例についてより詳細に知りたい方は、以下からご覧ください。
資生堂グループの全社員46000人を対象とした、ビジョン達成に向けた行動指針「TRUST8」浸透プロジェクト(mimicry designのWebサイトに移動します)

エンゲージメント向上につながる、本質的なインナーブランディングを

インナーブランディングというと、社員向けの情報発信を強化し、自社のミッションなどを刷り込んでいくような活動と捉えれることもあります。しかし、そういったトップダウン的思考での施策だけでなく、社員を巻き込み、組織内のコミュニケーションの中で自社が大事にしているものを内在化できるようにしていくボトムアップ的思考の施策も必ず取り組まなければいけません。

企業の目指す方向を社員が理解できるようなインナーブランディングを実践し、社員のエンゲージメントを高めていきましょう。

デザイン思考

あなたの場所を
もっと楽しく。

YOUR PLACE, MORE FUN.

戦略を作るだけではなく、DONGURIの専門家がチームを組み、ハンズオンで事業や組織をもっと楽しい場所にします。お悩みの課題について、ぜひお話しください。