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ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)

MISSION・VISION・VALUE

ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)とは?企業経営での活かし方と作り方

ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)とは?意味・定義

ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)とは、企業のフィロソフィーを構築するフレームワークのひとつです。実務的には、このMVVをそれぞれ「使命/目標/行動指標」に落とし込む形式が組織運営において使いやすく、多くの企業で取り入れられています。

「フィロソフィー」をそのまま日本語に訳すと「哲学」となりますが、ビジネスや経営の話をする上では企業理念や経営哲学といった意味を持ちます。企業のフィロソフィーを確立できれば組織全体の方向性が定まり、企業イメージの向上や社員のやりがいにつながっていくことが一般的に知られています。

なお、企業のフィロソフィーを構築するフレームワークとしては、MVVのほかにも企業の存在意義を考えていく「パーパス」や、「なぜ?」という問いからフィロソフィーを導く “Start with why” などがあります。

以下では、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)という考え方について、それぞれ位置付けをより詳しく解説します。

ミッション(Mission)とは

ミッションとは、企業が果たすべき使命のことです。後述するビジョンを実現するために、企業は一体何をするべきなのかという問いへの答えがミッションとなります。

例えば、ある食品メーカーが「日本を元気にする」というビジョンを掲げているのであれば、「安全で美味しい食品を創出し、食べる喜びを健康的に楽しめる幸せを提供する」といったミッションが考えられるでしょう。

ビジョン(Vision)とは

ビジョンとは、前述のミッションを達成することによってどのような未来を実現したいのかを言葉にしたものです。直近の目標というよりも、数年〜数十年先を見据えた中長期な未来をイメージすることが多いとされています。

バリュー(Value)とは

バリューとは、ミッションやビジョンを達成・実現するために、社員一人ひとりが意識するべき価値観、行動指針を指します。バリューをあまりに多く設定すると社員が覚えきれず、組織に規範が定着せずに、結果として機能しなくなってしまうこともあるため、バリューは3つや5つ程度で定める企業が実際には多いです。

前述の食品メーカーの例でいえば、たとえば「品質にこだわる」「お客さまの声に向き合う」といったバリューが考えられるでしょう。

ミッション・ビジョン・バリューにありがちな勘違い

ミッション・ビジョン・バリューなどで示される企業のフィロソフィーは、企業の活動の基礎となる考え方を示す非常に重要なものです。しかし、その重要性ゆえに間違った認識をされるケースも見られます。以下で紹介するのは、ミッション・ビジョン・バリューに対して抱かれることが多い2つの認識相違・誤解です。これらのケースを解説しつつ、正しい認識をお伝えしていきます。

よくある認識相違①:「ミッションやビジョンは、創業時に決めるべきだ」と思っている

ミッションとビジョン(特にミッション)は、ブレない軸として創業時に決めておくべきだと言われることがあります。投資家や関係者から、「目指す世界観があるからこそ、その企業を興したのでしょう?」と問われることがあるためです。しかし、最初からミッションやビジョンにこだわりすぎる必要はありません。特にスタートアップであれば、自社の製品やサービスがPMF(プロダクト・マーケット・フィット)する前に、企業としての理念をわざわざ言語化・固定する必要はないのです。

もちろん、企業としての理念や目指す世界観の大枠を考えておくことで、事業の方向性を定めやすくなるというメリットはあります。とはいえ、ミッションやビジョンを固定することで柔軟性を失い、事業活動そのものが立ち行かなくなっては本末転倒で、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)の上でビジネスモデルが定まり、事業がある程度軌道に乗るまでは、変化に対応できるようバッファを持たせておくほうがよいです。

実際には、投資家や採用候補者に向けたPRとして、創業初期の段階でミッションやビジョンを大々的に掲げることもあります。しかしこの場合も、最初からビジョン等の内容を固めきってしてしまうと、ミッションと実情に差異が生まれたときに働き手の満足度が下がってしまったり、投資家の意向を気にして事業に柔軟性を持たせられなかったりといった状況に陥りかねません。何らかの理由でミッション・ビジョンを決めなければいけなかったとしても、後になって帳尻合わせができるように「余白」を残しておきましょう。

シリコンバレーで成功するスタートアップ企業も、全てのケースで「最初からミッションやビジョンが明確だった」というわけではありません。とりあえずチャレンジしてみた事業が当たり、後から「そこにいるメンバーが大事にしていること」や「事業に対して抱いている想い」などを掘り上げていくことで、ミッションなどを考えていくパターンのほうが多いくらいです。ミッションやビジョンが足かせになるくらいなら、明確に言語化しない。そういうスタンスで問題ありません。

よくある認識相違②:「ミッション・ビジョン・バリューは創業者や社長がトップダウンで決めるものだ」と思っている

一般的に、ミッション・ビジョン・バリューなどのフィロソフィーは、会社や事業への思いが強い創業者や社長が決めるものだと思われがちです。その文脈では、働いている人の多くは、ミッション・ビジョン・バリューは入社した段階ですでに決められているもので、「暗記するもの」だと捉えます。

しかしミッション・ビジョン・バリュー(MVV)は、「結果としてMVVが明文化された状態」にではなく、「MVVを決めていく過程」にこそ意味があります。言語化されたミッション・ビジョン・バリューはあくまで結果。誰か一人の考えを言葉にするのではなく、社員それぞれの思いや働く意義を対話によって掘り下げ、最終的にミッションやビジョンに沿った判断をできるようにすることがミッション・ビジョン・バリューの意義だといえます。

どんなに素晴らしいミッション・ビジョン・バリューがあっても、現場の意識とあまりに違う内容であれば存在する意味がありません。ミッション・ビジョン・バリューが成功要因のひとつとして機能している企業は多いですが、作ること自体が目的になるのはピントのずれた考え方です。

ミッション・ビジョン・バリューの策定方法

ここでは、私たちDONGURIがミッション・ビジョン・バリューを定めてCI(コーポレート・アイデンティティ)を刷新した過程を元に、ミッション・ビジョン・バリューをどのように策定していけばいいのか、何を考えればいいのかのヒントを解説します。

もちろん、理想的な策定プロセスは各企業のビジネスモデルや風土によって異なるため、以下に挙げるヒントが当てはまらない企業もあります。「真似すべきケーススタディ」ではなく、ひとつの参考例として捉えてください。

DONGURIのミッション・ビジョン・バリュー

DONGURIが自社のCIをリニューアルしたのは2019年3月です。CIの刷新に向けてミッション・ビジョン・バリューを以下のように明文化しました。

ミッション:GAME CHANGE
ビジョン:PLAYGROUND
バリュー:内発動機、学習、ギバー、セルフマネジメント、専門性

実際の過程は以下の記事で詳しくレポートしています。本記事では過程の一部を取り上げながら解説していますので、より詳細に知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
DONGURIのCIが、新しくなるまで。——「内発動機」の対話で、組織はさらに強くなる

対話をベースに、アイデンティティを言語化する

DONGURIでは、ミッション・ビジョン策定の第一歩として「そもそもなぜ入社したのか?」「仕事関係なく好きなものって?」など社員の価値観を探る話題で丁寧な対話を行いました。対話の中で出てきたミッションやビジョンの原型となるキーワードを整理、構造化した上でさらに掘り下げ、より納得感のあるキーワードに近づけた結果生まれたのが、「PLAYGROUND」というビジョンです。

この「PLAYGROUND」の原型になったのは、対話の中に出てきた「遊び」や「公園」というキーワード。そのキーワードの背景を掘り下げる中で、「公園は各々が、好きなことをしているイメージ」「DONGURIはもう少し、自分の領域への役割意識や責任を持ちながら、一緒に作り上げていく場ではないか」という風に深まっていき、遊び場(PLAYGROUND)へとブラッシュアップされていきました。

そしてこのビジョンを実現するために求められる使命は何かと考えたとき、「自分たちが場を作る起点になれなければいけない」と気づき、「GAME CHANGE」というミッションが生まれました。

ミッション・ビジョンを定めた上で、バリューを決めていく

DONGURIでは、ミッションとビジョンが言語化されてから、改めて社員の価値観や内発的動機を探り、考え方が近い社員同士でコミュニティを作りました。その後、コミュニティの代表者を集めて委員会を作り、バリューの言語化を行っています。

「ミッション・ビジョンを定めるための対話を重ねた上で、バリューを考える」という工程を取り入れてMVVを策定した結果、社員一人ひとりも自身の行動の源泉を自然に言語化できる状態になっていました。
よりミッション・ビジョンと日常の業務を紐付けながら考えられる土壌ができていたため、全体の一貫性があり、納得感も高いバリューを策定できたのです。

組織の在り方や評価制度も、ミッション・ビジョン・バリューに紐付ける

ミッション・ビジョン・バリューを形骸化させないために、現場の意識と乖離しないよう、組織の在り方や評価制度とどう紐付けするのか考えておく必要があります。

一般的に組織の在り方や評価制度は、経営者や管理職など組織の中で上に位置する人物の裁量で決められがちです。しかし、一人ひとりの内発的動機を大事にするDONGURIにとって、このようなトップダウン形式はフィットしないという共通認識が生まれてきました。

そこで、評価制度も自分たちで作り、査定もメンバーで構成されるコミュニティ委員会が行うというルールに。こうして、メンバーにとって納得感のある組織の在り方を決定していきました。

ミッション・ビジョン・バリューを浸透させるには

ミッション・ビジョン・バリューの浸透に課題を抱える企業は多いです。基本的には、前述したDONGURIの例のように、策定や見直しの過程でのメンバー間の対話によって自然と浸透していくものであり、もし浸透していないならそういったプロセスの設計が必要になります。

逆に言えば、実際に策定に携わったり、リニューアルしたりしなくても、その過程を疑似体験できるようなワークショップなどを実行することで、ミッション・ビジョン・バリューを浸透させることができます。

ミッションが浸透していない企業では、それまでトップダウンで決めたものを社員に教え込むようなプロセスが取られていることがほとんどでしょう。ここに、社員間でのワークショップなどのボトムアップ型のアプローチを組み合わせることが重要です。

トップダウンとボトムアップを組み合わせて、バリューを内在化させた事例

ここで、一つ事例をご紹介します。トップダウンで決定されたバリュー(行動指針)を浸透させるために、ワークショップを取り入れた事例です。

資生堂グループでは、世界中に在籍する約4.6万人の社員を対象に、同社のバリューであるTRUST8を各自が自分ごととして落とし込むためのワークショップを実践しました。具体的には、8つあるバリューの中から1つを削り新たなバリューを再考する、ポスター作成を通じてバリューの在り方を見つめ直すといったワークを実践しています。

TRUST8

このワークショップの結果、行動指針への理解が深まり、自分たちの業務との紐付けが強化されました。世界各地の現場で行動指針が前向きに受け入れられ、ミッション達成に向けた土壌づくりに繋がったのです。

【関連記事】
資生堂グループの全社員46000人を対象とした、ビジョン達成に向けた行動指針「TRUST8」浸透プロジェクト(mimicry designのWebサイトに移動します)

ミッション・ビジョン・バリューは社員との対話で確立されていく

ミッション・ビジョン・バリューは社長や創業者が作るものと思っている方も少なくないでしょう。しかし実際は社員と一緒に作り上げていくべきであり、作り上げる過程や見直していく過程の中で組織に浸透していくものです。日常業務と結びつかない形だけのミッション・ビジョン・バリューでは、どんなに素晴らしく思えるものでも意味がありません。

また、ミッション・ビジョン・バリューを創業時に確立しておくべきというのもよくある勘違いです。ある程度の方向性を決めた後はビジネスモデルの確立を優先させ、事業活動のベースが固まった段階でミッション・ビジョン・バリューを掘り下げても決して遅くはありません。

正しい認識を持った上で、事業活動において適切にミッション・ビジョン・バリューを位置付けながら、上手に活用していきましょう。

デザイン思考

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戦略を作るだけではなく、DONGURIの専門家がチームを組み、ハンズオンで事業や組織をもっと楽しい場所にします。お悩みの課題について、ぜひお話しください。