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EMPOWERMENT

エンパワーメントとは?経営における意味と重要性、失敗しない導入ステップ

エンパワーメントとは?エンパワーメントの意味・定義

エンパワーメントとは、人が本来持っている能力を開花させ、自分の力で置かれている環境、状況を改革していけるよう支援する考え方のことをいいます。

エンパワーメントは、もともとは平等な人権や社会的立場を主張する市民運動、フェミニズム運動などに紐付いて使われることが多い言葉でした。しかし現在は社会福祉分野や教育分野などでも、エンパワーメントの考え方が取り入れられており、障がい者や子どもの自立を促すといった文脈でも使われるようになっています。

さまざまな場面で使われるようになっている「エンパワーメント」の概念ですが、本記事では企業経営や組織開発におけるエンパワーメントについて解説していきまます。

経営や組織開発におけるエンパワーメントの定義

企業経営や人事領域におけるエンパワーメントとは、社員に対して自立裁量権を渡した上でパフォーマンスを高める活動のことをいいます。ないしは逆説的に、エンゲージメントを高めることで、自立裁量的な動きをできるようになることとも解釈されます。

エンパワーメントに向けた取り組みは、各事業部やチーム、そして一人ひとりのメンバーに適切な範囲の裁量権を移譲する仕組みや制度を作ることから始まります。

同時に、与えられた裁量権を使いこなせるような組織の土壌づくりも必要です。管理者とメンバーへの教育、個々の自己肯定感、自己効力感を高めるコニュミケーションの取り方など伝えていくことで、「裁量権を与える仕組み」を活かせるようになるでしょう。

エンパワーメントを掲げて権限移譲したつもりが「だたの丸投げ」になってしまわないよう、組織の現状を正しく把握した上での設計が求められます。

なぜエンパワーメントが必要なのか?メリット、期待できる効果

社員をエンパワーメントすることで、得られる好ましい変化はさまざまですが、インパクトの大きいものを2つ挙げましょう。

1つ目は、事業に関する意思決定のスピードの高速化です。

あらゆる決定を上層部が行うトップダウン型の組織の場合、現場で生まれた新たなアイデアや改善施策を実行しようとしても、上長への意思決定のプロセスを経て承認されないと実行に移せないことになるため、実際に動き出すまでに相応の時間がかかってしまうことが多いです。その点、裁量権を適切に現場に委譲できれば、上層部の意思決定を待つことなく、柔軟でスピーディーな対応が可能になります。同時に顧客要望への対応スピードなどの業務スピードも速められるでしょう。

2つ目は、社員の主体性の向上です。

適切な「裁量権」を与えることで、社員のモチベーションを高め、一人ひとりの能動的な動きを引き出すことができます。「自分自身で意思決定して動ける環境」を整えることで、社員の意識を変化させられるでしょう。

また、自身で意思決定する経験を積むことで視野が広がり、上司や経営側の考え、意図を理解できる可能性も高まります。指示を受けて動くだけだった状態とはまったく異なる能力を引き出せるのです。

エンパワーメントのデメリット、リスク

社員をエンパワーメントすることは、基本的に企業にとってはプラスの影響が大きいものです。しかし、自社の置かれている状況や社員の能力に合わせて設計、実行しなければ、逆効果になってしまう可能性もあります。

エンパワーメントを推進するにあたって理解しておくべきデメリットやリスクを紹介します。

過度な権限移譲が不満やストレスにつながる

今まで全くそういった文化がなかった企業において、いきなり社員に権限や責任を与えても、社員は「どこまでを自分の裁量で判断していいのか」がわからずに戸惑ってしまうことがあります。本人の力量に見合わない責任や権限を与えてしまうと、ストレスを感じて仕事に対するモチベーションが低下したり、「自分にはできない」と萎縮してしまったりもします。

権限委譲の適切な範囲は、各企業のビジネスモデルやメンバーの能力、スキルによって変わります。企業固有の状況を鑑みて、適切に検討しなければいけません。

仕組みを適切に運用できず、結果として裁量権を行使できない

ビジネスモデルや組織の現状を元に適切な権限移譲の設計ができても、それを正しく運用するための教育や意識改革が行われていなければワークしません。

例えば、与えられた権限の範囲で意思決定して動いたにも関わらず「なぜ事前に確認しなかったのか?」などと上司が部下を問い詰めるといった事態が発生することがあります。これは上司が、エンパワーメントの取り組みや部下への適切な接し方を理解していない状態です。

こうなると、表面的には裁量権を持っていても実際には使えないため、社員は不満を感じます。どれほど適切な仕組みを作っても、それを扱う人の認識や運用方法が間違っていたら逆効果になるのです。設計と運用はセットで考えなければいけません。

自己裁量権に向かない社員への対応には注意が必要

従来のピラミッド型組織では、部下は上司からの指示通りに動くことを求められ、自分で意思決定を行う必要はありませんでした。そういった働き方に慣れている、もしくは好んでいる人は、権限を移譲されても主体的に動くことは難しいでしょう。

組織にこういった「非主体的な社員」が多いという場合には、会社が一方的に権限を移譲して社員をエンパワーメントしようとしても、なかなかうまくいきません。経営陣や組織開発を担う人事部は、「せっかく権限移譲しても、まったく主体的に動いてくれない」と思ってしまうかもしれませんが、実際には社員も戸惑っているのです。

エンパワーメントが向いていないタイプには対しては、段階を踏み、できる範囲で権限を渡していくステップを踏んでいく必要があるでしょう。また、当然ながらエンパワーメント自体は義務ではないので、上意下達でうまく機能している組織なのであれば、無理に取り組まないという発想の転換も必要です。

エンパワーメントを実現するための方法や手段、事例

従業員をエンパワーメントしていきたい。そう思ったとき、どのように進めていけばいいのでしょうか。先にも書いたとおり、企業のビジネスモデルやそこにいるメンバーによって適切な方法は変わるため、唯一の正解や、決まった手順はありません。

ここでは、エンパワーメントのヒントになるような手法をいくつか紹介します

組織開発部の立ち上げ

従業員の能力を引き出し、組織のパフォーマンスを最大化することに対して責任を負う専門部署を立ち上げるのが、大きなトレンドになっています。部署の名前はさまざまですが、担うのは「組織開発(Organization Development)」です。

人事領域には、以前から人材育成、人材開発の機能がありました。ただ、組織開発は人材開発とは異なるものです。

人材開発は、従業員個人に焦点を当てて教育や研修を行い、仕事に対するパフォーマンス向上させることを目的とします。対して組織開発は、グループ内や集合体での人同士の「関係性」や「相互作用」のシステムに焦点を当て、その構成員が自ら組織をより良く変革できるようにしていく効果を期待します。人材開発部の焦点が「人」であったのに対し、組織開発部の焦点は「組織」になるわけです。

このような部署を立ち上げ、従業員のエンパワーメントやエンゲージメント向上などを主導できるようにすることで、個々の能力開発にとどまらず、組織としてのより大きな成果を出すことができるようになる可能性が高まります。

ワークショップやグループ研修、1on1による動機付け

エンパワーメントの実現に向けては、権限移譲の仕組みや裁量の範囲、その背景にある組織や事業のミッションへの理解を深める必要があります。そうしなければ、優れた仕組みを作っても、運用ができないからです。

理解を深めるために有効なのが、オフサイトミーティングやワークショップなどです。特定のテーマについて考え、アウトプットできるようなワークショップを継続的に行うことで、エンパワーメントに向けて必要な思考を理想的な形で浸透させていけるでしょう。

また、エンパワーメントによって従業員の自主的な行動を引き出すには、1on1も重要です。上司が部下の不安や疑問点を解消したり、どうしたいのか、何をしたいのかなどの思考・行動を引き出すようなコミュニケーションができれば、エンパワーメントされている状態を実現できます。

マネージャー、中間管理職の育成

1on1の重要性を書きましたが、従業員をエンパワーメントしていくためにはマネジメント層が重要な役割を果たします。ですから、エンパワーメントできている、エンゲージメントが高い状態を実現、維持するためには、マネージャーの育成が欠かせません。

良いマネージャーは、関係する部署や上層部と連携しながら、自部署やチームが動きやすい環境を整えられます。そうすることで、部下が自ら意思決定しながら挑戦できる状態を作るのです。その結果、チームメンバーはエンパワーメントされ、エンゲージメントも高まり、育成にもつながります。

こういった動きができるマネージャーがどれだけいるかによって、組織全体をエンパワーメントしていけるかが決まるので、仕組み作りと同じくらいマネジメント人材の育成も重要になってきます。

エンパワーメントで個々が自律的に動ける組織をめざそう

エンパワーメントは、中央集権になっていた権限を委譲することや、潜在能力を開花させ個々人が自律的に動けるようにしていくことを言います。スピードが求められる現代のビジネス環境において、従業員をエンパワーメントし、自律的に判断して迅速にアクションをとれるようにしていくことは非常に重要です。

組織の状況を正しく把握しながら、エンパワーメントの実現に向けた適切な仕組み作りと、運用可能な組織体制の構築に取り組んでいきましょう。

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