コミュニケーションデザインとは。事例でわかる3つのポイント
コミュニケーションデザインとは
コミュニケーションデザインとは、事業におけるブランド、マーケティング領域における状況を整理しながら、ユーザーへのベストなデリバリー戦略を組み立てつつ、タッチポイントとなるグラフィック・Web・映像・立体物などを組み合わせながらコミュニケーションのとり方を設計し、各媒体におけるデザイン定着までを実現することです。
ターゲットの心を動かすために、コミュニケーションを「デザイン」する
一般論としてスマートフォンの普及で目にする情報量が膨大になっている今日、顧客に企業からのメッセージを理解してもらうには工夫が必要です。
かつては大々的に広告を行えばよかったものも、より細やかな伝え方の工夫がなければ顧客には届かなくなっています。ここにコミュニケーションデザインの存在意義があります。
コミュニケーションデザインは、一方的に情報を発信するものではなく、顧客の心を動かすように「デザイン」するものです。
顧客心理を読み取りながらさまざまなデリバリーの手法を活用し、それらに合わせたアウトプットを用いながら、受け取ってもらえるようなコミュニケーションをとっていく。ターゲットの行動変容を引き出すには、こういったコミュニケーションデザインの視点が必要不可欠になっています。
コミュニケーションデザインの実例から、その手法を学ぶ
ここでは、弊社が支援したコミュニケーションデザインの事例をご紹介します。
事例:株式会社ウエディングパーク
https://www.weddingpark.co.jp/
株式会社ウエディングパークは、結婚式場の口コミ情報サイトなど5つのメディアを運営している会社です。
同社のオウンドメディア「結婚あした研究所」における新しいコミュニティプロジェクト「#ふたりのカタチ」において、プロジェクトの意義やメッセージを伝えるためのコミュニケーションデザインに取り組みました。
具体的には、プロジェクトのコンセプトにそったワークショップの設計とそこから生み出されたコンテンツのデリバリーを設計しています。
「結婚を、もっと幸せにしよう。」という経営理念をベースに、ワークショップを立案
「#ふたりのカタチ」プロジェクトでは、結婚を「誰かと共に生きることを選択する」という意思の表れとして広義に捉えており、“「ふたりのカタチ」を、楽しく、素敵に、幸せにしようとしている方々を応援する”をコンセプトとしていました。
同社は「結婚を、もっと幸せにしよう。」という経営理念を掲げており、コミュニティプロジェクト「#ふたりのカタチ」も、多様化する結婚の在り方を含めて結婚について考えるコミュニティになっています。
オンラインコミュニティとしてスタートした「#ふたりのカタチ」でしたが、コンセプトをより深く伝えていく取り組みの一環として、初のオフライン企画となるワークショップの開催が決定。
このワークショップそのものはもちろんのこと、ワークショップから生まれるコンテンツを活用しながらプロジェクトのメッセージをより多くの人に伝えていくことを、コミュニケーションデザインの主眼として置きました。
ワークショップの大きなテーマは、「わたしにとって『結婚』って?」。
まずはいわゆる一般的な“結婚”にフォーカスを絞りすぎず、これまでの日々の生活で幸せだったことや、気持ちの変化があったタイミングなど、広く人生を振り返りました。その後、結婚とは何か、幸せと結婚とのつながりなどへとつなげていくよう、全体を設計しました。
デリバリー戦略とタッチポイント設計
プロジェクトのメッセージを伝えるにあたってデリバリーを考え、タッチポイントとしてワークショップの動画化とグラフィックレコーディング化を決定。
ワークショップの性質上、台本などを用意できないのが懸念点になり得ますが、恣意的に意図したメッセージを伝えるものではなく、参加者のリアルな声を動画に載せることを重視しました。ワークショップを楽しんでもらい、本音で語っていただく。その素材を活かしながらワークショップに参加していない人にもメッセージが伝わるような動画を制作しました。
さらに、動画より手軽に見てもらえるコンテンツとしてグラフィックレコーディングも制作しています。
デリバリー面では、こちらから情報を出すタイミングを複数回に分けることで、ターゲットへの露出が増えるタイミングをいくつか作り、接触回数を増やすという工夫もしています。
動画を3本制作し、それぞれの公開タイミングをずらしながらメッセージングを工夫したほか、「#ふたりのカタチ」をテーマにしたSNS投稿キャンペーンや、ワークショップのエピソードをベースにした漫画の発信など、多角的に露出するよう設計しました。漫画については、SNSでの影響力があり、かつウェディングパークの理念に共感していくれるクリエイターとコラボレーションし、適切なターゲットに広く接触することも狙いました。
どのように届き、どんな反応があったか
ワークショップをベースに、複数のタッチポイントを取り入れながらメッセージを伝えた結果、「#ふたりのカタチ」プロジェクトのメッセージにとどまらず、「結婚を、もっと幸せにしよう。」という経営理念を含めたウェディングパークの思想がターゲットに届き、かつポジティブな反応が多く寄せられました。また、根底の理念が伝わることで、複数展開しているそれぞれの事業の意義も伝わりました。
さらに、コミュニティとしての「#ふたりのカタチ」のあり方をより深めるという効果もありました。ワークショップおよびそこから生まれたコンテンツの流通により、結婚という重要なことでありながらもなかなか他の人と話す機会がなかったものを話せるコミュニティとして「#ふたりのカタチ」は機能するという情報を、ターゲットに伝えられたのです。
事例の詳細はこちらでもご覧になれます。
【WORKS|実績】結婚を、もっと幸せにしよう。「ウエディングパーク」のブランドコンテンツ開発と、ワークショップ・プロモーションムービー開発。
「結婚って、なんだろう?」ブランド価値の理解を深める、ウエディングパークのワークショップデザイン。 | QUERCUS’S NOTES - DONGURIの成長を記すノート
コミュニケーションデザインで考えるべきこと
事例を踏まえて、コミュニケーションデザインを実践していくにあたって必ず考えなければならないことをお伝えします。
コミュニケーションを通して誰に何を伝えたいのかを明確にする
まず考えるべきことは「どんな人とコミュニケーションをとり、何を伝えたいか」です。
ウェディングパークの事例でいえば、「『ふたりのカタチ』を、楽しく、素敵に、幸せにしようとしている方々を応援する」というメッセージがあり、これを様々な結婚の在り方に興味を持つ人たちに広げることが目的でした。
コミュニケーションデザインに取り組む前に、伝えたいメッセージや目的、対象を定めましょう。
デリバリー(届け方)から必要なアウトプットを考える
伝えるべきことを明確にしたうえで、ターゲットへのデリバリーやアウトプットを考えていきます。「通例だから」「それが一般的だから」という理由でアウトプットを決めることは適切ではありません。どういうタッチポイントで届ければユーザーは受け取ってくれるのかを想定した上で、必要なコミュニケーションツールを決めていきます。
株式会社ウエディングパークの事例でも複数のタッチポイントを用いていますが、そのひとつにSNS漫画がありました。ただ普通に説明しただけではパートナーと共に過ごす生活やそれにまつわる人の想いなどを伝えるのは難しいものです。ですが、漫画にすることで感情移入しやすくなり、ターゲットは自分のことのように考えやすくなるでしょう。その結果、メッセージもより深く伝わるのです。
特に、これまでに制作したことがないタイプのアウトプットを取り入れるのはリスクだと感じられるかもしれません。しかしながら、「ユーザーに届けるために必要か」という視点で考えていくことが重要です。
見た目の刷新として捉えない
デリバリーのためのアウトプットはコミュニケーションデザインに必要不可欠なものです。また、これまで使っていたVIの刷新やサイトリニューアルなどが必要になることもあります。そういったときに、見た目をきれいにする、今風にするということに主眼が置かれてしまうことがありますが、これは誤りです。
どんなに見た目がきれいになったとしても、きれいなだけでは情報はターゲットには伝わりません。ターゲットに伝えるためのデリバリーとアウトプットを組み合わせたコミュニケーション設計が基礎にないと、コストばかりがかかってしまいます。大事なのは、そのデザイン刷新の上流にある「伝えたいこと」であり、そこから軸足を外さないようにしてください。
コミュニケーションデザインはターゲットあってのもの
コミュニケーションデザインでは、ターゲットの心を動かせるように情報発信をデザインします。しかし、情報のあふれた現代では人々の心や行動を動かすのは容易ではありません。根底の目的を明確にしたら、どのような伝え方をしたらターゲットはメッセージを受け取りやすいか、顧客の目線に立ったタッチポイント抽出が大切です。